この頃「ヘンな建造物」が流行っている。

たとえば廃墟ブームについては、わざわざ言うまでもないだろう。廃墟写真集は本屋でも平積みになったから、手にとってみたことのある人も多いのでは？
それから、工場。夜の工場見学ツアーなんてのも、結構あちこちで催されていた。
人気のなくしんとした、崩れかけそうな廃墟の、それでもそこかしこに残る生活の痕跡。無機的な鉄パイプが、血管のように複雑に組み合わされ鼓動する工場……。普通の建築や生活する街並みとは違う、その建造物にしかない魅力がそこにはある。

写真好きや旅行好き達との相性の良さも手伝って、建造物ブームは今じゃ立派な趣味の一ジャンル。ぶらり日帰り旅行や、街歩きのエッセンスとしても、嗜んでおくとイイというわけ。

さて、廃墟や工場のヒットに背中を押されて、「コレもいいんだよ！」と声を上げるマニアが増えている。橋マニア、団地マニア、電線マニア……。次は一体何がブームとなるの！？
そんな群雄割拠の中に一石を投じるのが、「GastankMap」である。

・ガスタンク・マップ

「GastankMap」は、世界初のガスタンク写真集『ガスタンク・グラフィティ』を刊行したガスタンク・マップ・プロジェクトが贈る、日本全国のガスタンク（ちなみに、正式名称は「ガスホルダー」っていうんだって。知ってた？）を紹介するアプリだ。

「ガスタンク」なんて文字をこんなに目にしたのは生まれて初めてだよ……と思うのはまだ早い。アプリを起動すると表示されるリストから地域を選ぶと、ずらりと並ぶガスタンク、ガスタンク、ガスタンク……。
実に全国52ヶ所（9月11日現在）！ものガスタンクが、何枚もの写真、そしてキャッチフレーズとともに収録されている。

このキャッチフレーズが、またアツい。
例えば「高島平」は、「カテドラル（大聖堂）」。タップして、収録された写真を見てみると、なるほど傍らに高い塔を従えた姿がまさに大聖堂の風格。
「平沼橋」の「絶対の距離感、対峙」や「善行」の「哀愁ファクトリー」など、名作（！？）揃いである。

写真集として眺めるのも楽しいけれど、「建造物マニア」の醍醐味は、やっぱり実際に行って見てみること。「GastankMap」には地図機能も搭載されており、「アクセス方法」をタップすると、航空写真マップとともに最寄り駅名が表示される。
そう、地図は航空写真マップなのだが、これがポイントなのだ。一体なぜかって？

地図をズームさせると……そう！　ガスタンクの丸い姿が、上空から確認できるのである。
改めて見てみると、この丸いタンクは、め、目立つー……。改めてそのインパクト、異様さ、そして可愛さを思い知ることができるとともに、タンクの配列なども確認できるという仕掛け。
この細やかな配慮には唸らせられる。さすがはマニアの仕事！

また、地図には現在地機能も搭載されているので、徒歩や車でも迷わず辿り着くことができる。
それに近くまで来れば、建物の向こうにガスタンクの丸い姿も見えてきたりして……。

せっかくなので筆者も「練馬高野台」のガスタンクに行ってみた。
キャッチフレーズは「家族の穏やかな休日」。そう言われると、6基ものガスタンクがひっそりと身を寄せ合っている姿が、なるほど愛らしくも見えてくるような……。

こんなところに目をつけるのか！という驚き、マニアたちの情熱への尊敬……それらもまた、「ヘンな建造物」の魅力の一部である。
それらを存分に味わえる「GastankMap」。果たして新たな「ガスタンクブーム」の旗手となるのか？

あなたもぜひ今度の休みには「GastankMap」を携えて、お近くのガスタンクを訪ねてみてほしい。流行の最先端の趣味になるかも。

・ガスタンク・マップ

執筆：yukk