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LINEによるNAVER社への電話番号ダダ漏れは何故「野放し」にされているのか(執筆:@tokikawase)



LINEを使うと個人情報をNAVER社に渡してしまうことになる、気持ちが悪いからLINEなんか使わない……という人もいる。しかし、LINEには「電話帳データをNAVER社に送信する」という機能がある。自分がLINEを使わなくても、友達がLINEを使って電話帳をNAVER社に送信したら、自分の電話番号などがNAVER社に筒抜けになってしまうのだ。
この状態は、LINEを使わない人の目には、「気持ちが悪いもの」と映りかねない。なぜLINEの上記機能は「野放し」にされているのだろうか。

なお、LINEの運営元は「LINE株式会社」だが、「LINEアプリ」と区別する観点より、本記事では「NAVER社」と記述する。

執筆:法務博士 河瀬 季(tokikawase.info

LINEの機能は何故「気持ち悪い」のか

電話帳送信がなぜ「気持ち悪い」のか分析すると、以下のような構図だろう。



LINEを使っていない人(LINE嫌い君)は、たしかに友達(LINE好き君)に電話番号などを教えた。教えたが、LINE好き君NAVER社に教えるのを許した覚えはない。NAVER社LINE嫌い君の電話番号などを欲しいと言うなら、NAVER社LINE嫌い君に「電話番号を教えて」と頼むべきだ。そうすればLINE嫌い君は「やだ」と言える。

LINEは個人情報保護法に違反している?

電話番号などは、いわゆる「個人情報」なので、まずは「個人情報保護法」という法律が問題になる。
個人情報保護法は、企業などによる個人情報の取得について、以下のような規律を置いている。

「企業などが個人情報を取得する場合には、取得相手を騙したりしてはダメ」(17条参照)

……どういうことかというと

NAVER社LINE好き君(取得相手)を騙してはいけない
・しかし別にLINE嫌い君の同意などを取る必要はない

ということだ。実際、経産省のQ&Aでも、

Q
サービスを利用した本人から友人を紹介してもらい、その友人の個人情報を取得する、「友人紹介キャンペーン」による取得は個人情報の取得の手段として適正ですか。

A
事業者が偽ったり、騙したりするなどして、個人情報を不正に取得するのでなければ、法に違反しているということにはなりません。(2005.1.14)

個人情報保護ガイドラインQ&A

とされている。LINEの上記機能は、「友人紹介キャンペーン」と同様だろう。

NAVER社への漏洩は「被害」ではない?

個人情報保護法は、実際に被害が生じる前にそれを予防する、「交通ルール」を決める法律だ、と言われている。

・予防するべき被害:交通事故 → 予防のための規制:スピード制限など
・予防するべき被害:情報漏洩 → 予防のための規制:上記取得規制など

という関係だ。
……この説明を聞いて、「納得できない」と思う人もいるはず。今回の場合で言えば、そもそもNAVER社に情報を取得されること自体が「被害」じゃないか!、ということだ。
この感覚は、決して「あり得ない」ものではないだろう。しかし、現在一般的には

・情報が漏洩して公開されてしまう:「被害」である
・情報がNAVER社など特定の人間・会社に伝わる:「被害」ではない

と考えられている。

プライバシーの侵害ではないの?

これに対する反論は、「いやいや、NAVER社に伝わるのはプライバシーの侵害だろ!」というものだろう。
この「プライバシー」をもう少し具体的に言うと、いわゆる「自己情報コントロール権」ということになる。その名の通り、「自己の情報をコントロールする権利」ということだ。
LINE嫌い君の電話番号は、LINE嫌い君にとって「自己の情報」だ。LINE嫌い君の知らないところで、電話番号などがLINE好き君からNAVER社に伝わっていることは、その「コントロール権」の侵害だ。

NAVER社に電話番号を取得させない権利

しかし、「自己情報コントロール権」というものは、私人や私企業間……つまりLINE嫌い君NAVER社の間……では、まだ確立されていない。「まだ確立されていない」というより、むしろ、個人情報保護法が上記のような規律(LINE好き君を騙しちゃダメ)しか置いていないのは、「そんな権利はない」「法律的に守られるものではない」という考え方に基づく、などとも言われている。
「気持ち悪い」という人が少なからずいるとしても、その感覚が法律的に守られる(べき)ものかは何とも言えず、むしろ、「守られない」という方に傾きつつある。……というのが実際のところなのだ。

法務博士 河瀬 季
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年から「tokix」名義で、雑誌「ネットランナー」「PC Japan」への寄稿、書籍「iPod for コレクターズ」の全編執筆など、多数の雑誌・書籍における執筆活動を行う。2009年に東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、2013年に司法試験に合格。
 

投稿日時2013年09月05日18時00分 | カテゴリー: チップス | キーワード:
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