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Vineは何故6秒間なのか 「6秒間なら著作権侵害にならない」ってマジ?(執筆:@tokikawase)



「Vine」とは、6秒間のループ動画を共有する動画共有サービス。国内人気は「まだこれから」という感じだが、特に海外のiPhoneユーザーの間で人気を集めている。
「Vine」は、何故「6秒間」なのか。「著作権が理由だ」という話がある(参考:Vine、ヒップホップ、そして動画共有のこれからについて:ラップミュージックと著作権から学べること : ライフハッカー[日本版])。2003年にアメリカの裁判所が、「6秒間の音楽のコピーは著作権侵害にならない」という判決を出しているからだ。

執筆:法務博士 河瀬 季(tokikawase.infoGoogle

「6秒間なら著作権侵害にならない」という「ルール」?

しかし、上記ライフハッカー日本版の記事によれば

カルフォルニアの下級裁判所は6秒間以下のサンプルは著作権侵害にならないというルールを作り

とのことなのだが、これは誤りだ(原文を読むに、和訳者の誤訳だ)。そんな「ルール」は作られていない。

マッシュアップ文化の最新型「Vine」

「Vine」は、いわゆる「サンプリング」や「マッシュアップ」などの流れの上にあるサービスだ。「Vine」自体をまだ使っていない~そもそも名前自体初めて聞いた、という人の中にも、ニコニコ動画など、日本のネット文化の中で、いわゆる「マッシュアップ」に触れている人は多いだろう。「Vine」は、日本のネットユーザーにとっても、なかなか相性が良いサービスであるはずだ。

コピーは必ず著作権侵害で違法になる?

誤解している人も多いが、他人の動画や音楽をコピーしたとしても、必ず「著作権侵害」になるわけではない。日本にせよアメリカにせよ、大きく、以下のような判断が行われるのだ。

1. そもそも、それは「著作権侵害になるようなコピー」か?

例えば、5分の曲を5分全部コピーしたり、1分コピーしたりすれば、それは「著作権侵害になるようなコピー」だ。しかし、0.1秒コピーしただけなら、それは単なる「ジャン!」とかいう音だ。「著作権侵害になるようなコピー」ではない。

2. だとしても、例外的に合法にならない?

日本の場合は、「こういう条件を満たせば『引用』」「こういう条件を満たせば『写り込み』」というように、各ケース毎に別々の規定が用意されている。
アメリカの場合は、いわゆる「フェアユース」という一般規定がある。「日本にも導入されないかなぁ」と言われているアレだ。

ポイントとして、これらは別のレベルの問題だ。1分コピーしたとしたって(1のレベル)、それが「引用」などの理由で合法になる(2のレベル)ことはあり得る。

なぜ「6秒間」のコピーが合法だったのか

冒頭で紹介した、「6秒間のコピーなら著作権侵害にならない」という判決は、上記の1のレベルで著作権侵害を否定している。
ビースティー・ボーイズの「Pass the Mic」という曲が、ジャズミュージシャンによる3音符/6秒分のフルート演奏をサンプリング素材として使ったことが、著作権侵害じゃないか?……と問題になった事件で、判決文(PDF)によれば、大まかに以下のような理屈だ。

  1. 1. 平均的な観客から見て「お、これはあの曲をコピーしているんだな」と分からないのであれば、「著作権侵害になるようなコピー」ではない。
  2. 2. 本件では、3音符/6秒分がコピーされているだけで、平均的な観客から見て「お、これはあの曲をコピーしているんだな」と分からない。
  3. 3. だから今回は著作権侵害ではない。

……そう、この判決は、別に「6秒間」という数字にこだわった訳ではない。

  • ・たまたまこのケースが「6秒間」だった
  • ・そして、このケースは著作権侵害にならなかった

というだけだ。

カルフォルニアの下級裁判所は6秒間以下のサンプルは著作権侵害にならないというルールを作り

「ルール」と言えるのは上「理屈」の1であり、「6秒間以下なら~」という「ルール」は作られていない。

「6秒間」には願掛け程度の意味しかない



この考え方からは、音楽より動画の方が、短い時間でも「著作権侵害になるようなコピー」と言われやすい、と思われる。0.1秒の音楽なら「音」に過ぎないが、0.1秒の動画であれば「お、あの映画のあのシーン」などと分かってしまう、という傾向があるだろう。
「Vine」が「6秒間」を選択したことに、「願掛け」程度の意味はあるかもしれないが、それ以上の意味を見出すのは難しそうだ。

Vineで他人の動画を使って遊ぶには?

他人の動画を使い、「Vine」で著作権侵害にならずに遊ぶには、大きく二つの方向性がある、ということになる。

  1. ・それだけ見ても「お、あの映画のあのシーン」などと分からないような、しかしループ再生させると面白い、そんなシーンを利用する
  2. ・他人の動画を、「引用」や「写り込み」など、「例外的に合法になる条件」を満たすように利用する

……両方とも、かなり危ないところを突くやり方なので、オススメはできないけど。

法務博士 河瀬 季
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年から「tokix」名義で、雑誌「ネットランナー」「PC Japan」への寄稿、書籍「iPod for コレクターズ」の全編執筆など、多数の雑誌・書籍における執筆活動を行う。2009年に東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、2013年に司法試験に合格。
 

投稿日時2013年09月01日18時00分 | カテゴリー: ニュース | キーワード:
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